日本中を走る8,000万台の車。それら車の安全は、54万人の従事者と、9万2,000もの整備工場で構成される「自動車整備産業」に支えられてます。一般的に、自動車整備産業は斜陽産業と見做されることが多いのですが、この記事では、自動車整備産業の売上高・市場規模その推移収益性などについて、数字をベースに解説していきます。

自動車整備産業の工場数、推移、内訳、従事者、平均年齢などについては、以下の記事で解説しましたので、こちらをご参照ください。

Seibiiマガジン:自動車整備業界の基本 - 工場数と従事者

【最新】自動車整備産業の市場規模:5.6兆円

自動車整備の業界市場規模は、(社)日本整備振興会連合会が毎年集計し「自動車分解整備業実態調査結果概要」という形で公表しています。

注意点として、行政から認定を受けた指定工場含む認定工場の売上が統計の前提となります。従い、認定工場ではない鈑金・塗装専業、一般のガレージの売上は、統計データに含みません。

さて、最新(2019年)の調査によると、自動車整備業界の総売上、つまり市場規模は5.6兆円の巨大市場です。(2018年:5.5兆円)

隣接業界との比較

5兆6千億円という数字がどれほど大きいのか、隣接する市場である中古車市場(ガリバーなどに代表される産業)とカー用品市場(オートバックスやイエローハットに代表される産業)と比較してみましょう。以下金額は2018年前提です。

  • 中古車市場 : 1兆9,800億円
  • カー用品 : 1兆7,000億円

整備産業の大きさが際立ちますね。

業態別整備売上

認証を有する整備工場は以下4つに分類されます。各々の整備売上高(2019年)と併せて見ていきましょう。

  1. 専業(街の整備工場など独立系、モータス): 1兆9,444億円
  2. 兼業(ガソリンスタンドやオートバックスなど): 6,830億円
  3. ディーラー: 2兆7,672億円
  4. 自家(タクシー会社など): 2,270億円

ディーラーの整備売上が一番多いことがわかりますね。やはりディーラーはブランド力がありますので、整備の集客に於いても、有利と言えそうです。

整備業の分類・数については、Seibiiマガジン:自動車整備業界の基本 - 工場数と従事者をご参照ください。

整備産業の売上高・市場規模推移(2005-2019年)

自動車整備は「斜陽産業」という声も良く聞きます。実際に、業界の総売上は落ちているのでしょうか。統計データを見てみましょう。

  • 2006年 : 6兆 945億円(ピーク)
  • 2010年 : 5兆4,869億円
  • 2015年 : 5兆5,133億円
  • 2019年 : 5兆6,216億円(最新)

2006年をピークに整備売上は微減:年平均成長率は▲0.41%

入手可能な2005年以降の数字を見ると、2006年に記録した6兆945億円をピークに、2019年には5兆6,216億円まで減少しています。2006年から2019年の平均成長率(CAGR)は0.41%減でした。

過去10年で見ると実質横ばい

2010年から2019年までの過去10年に絞ってみると、微増と微減を毎年繰り返しており、実質横ばいと言えます。過去10年の年平均成長率(CAGR)は+0.27%でした。

業態別の整備売上推移

次に、整備売上の年平均成長率を「専業」と「ディーラー」に分けて見てみましょう。2005年からの過去15年、2010年からの過去10年の年平均成長率を計算しました。以下グラフの通り、専業と兼業は相対的に小さいため、ここでは省いています。

  • 専業 : (過去15年)▲0.37%、(過去10年)▲0.31%
  • ディーラー : (過去15年)▲0.31%、(過去10年)0.56%

ディーラーは整備売上を維持、専業は売上を落としている

ここまでの結果をまとめると、ディーラーの整備売上はなんとか横ばいを維持しているが、街の整備工場・モータス等の専業事業者の整備売上は、毎年微減していることが分かりました。

整備売上推移(専業、兼業、ディーラー、自家)

ディーラー整備工場は増え、街の整備工場は減少

整備工場の数を2011年と2019年で比べた場合、専業整備工場は数を減らしているのに対し、整備機能を有するディーラーの数は増えています。詳しくは自動車整備業界の基本 - 工場数と従事者

専業整備工場

  • 2011年(ピーク):5万7,266工場
  • 2019年(最新):5万6,032工場

ディーラー整備工場

  • 2011年:1万6,015工場
  • 2019年(最新):1万6,349工場

この事実は、実際に感覚と一致しています。

街の整備工場は、後継者不足や高齢化などを理由に、廃業する工場が年々増加しています。

一方で、ディーラーの整備工場は、常時仕事が溢れており、パンパンです。

かつては、近所にある「私の整備工場」が、一般の人には遠く近づきにくい存在になり、「ディーラー」に整備を依頼するようになったことも原因の1つと考えられます。また、自動車の高度化により、整備に対応できなくなった街の整備工場が、ディーラーに仕事を流すといった、かつでとは逆の流れも産まれいます。

整備関連売上の内訳(2019年)

整備業界の総売上:5.6兆円の中身をみてみましょう。

  • 車検関連売上 : 2兆2,205億円 「自賠責」「重量税」は含まず、車検に付随する整備は含む
  • 法定点検関連売上 : 3,773億円
  • 事故整備関連売上 : 1兆1,356億円
  • その他(一般整備)関連売上 : 1兆8,882億円
整備売上推移(車検整備、定期点検整備、事故整備、その他整備)

ディーラーは街の整備工場の7倍法定点検を取れている

統計数値を分析すると、いろいろなことが分かりますが、重要なポイントは「専業の自動車整備工場モータスは、定期点検の顧客をディーラー比で取れていない」ということではないでしょう。

営業マンを抱えるディーラーは、顧客へのDMや電話、あるいは車と合わせて販売するメンテナンスパックなどを熱心に販売しており、車に付随する整備も収益として確り取り込んでいることが読み取れます。

Seibii作成:整備市場の内訳

整備工場毎の売上はディーラーが圧倒的

数の面では、専業の整備工場が5万6千工場(全体の60%)、ディーラー付随の整備工場が1万6千工場(全体の16%)と、街の整備工場に代表される専業整備工場が圧倒的に上回っているのですが、売上で見ると、専業の整備工場が1兆9,000億円に対して、ディーラーの整備売上2兆7,000億円と大きく逆転しています。

整備売上

  1. 専業(街の整備工場など独立系、モータス): 1兆9,444億円
  2. 兼業(ガソリンスタンドやオートバックスなど): 6,830億円
  3. ディーラー: 2兆7,672億円

整備工場数

  1. 専業 : 5万6,032工場(61%)
  2. 兼業 : 1万5,702工場(17%)
  3. ディーラー : 1万6,349工場(18%)

これを単純に割ることで、工場・事業所毎の売上を算出すると、以下の結果となります。

整備工場当たり整備売上:

  • 専業 : 3,470万円/事業所
  • 兼業 : 4,350/事業所
  • ディーラー : 1.69億円/事業所

ディーラーの収益性が圧倒的に高いことがよく分かりますね。

車関連は、整備・修理が一番儲かる

一般の人とっては、「新車販売」が1番儲かって、2番目に「中古車販売」、3番目に「整備・修理」と思い浮かべる方がほとんどでしょう。中には、(特にディーラーにとって)「整備・修理」は付帯のサービス程度にしか捉えていない方も多くみられます。

整備はディーラーの利益減

実際には、「整備」は、儲かるサービスなのです。特にディーラーに顕著ですが、車が売れるのは新年度である3-4月に集中します。それ以外の期間は、「整備」で売上を獲得し、年間で収益をあげる構造になっています。

整備は、物を売るだけではなく工賃(時間あたりの技術料)も発生します。特に、新車のディーラーは、看板の力・信用力で客を獲得しやすいため、単価を上げやすく、整備の利益比率を高く維持することができます。車を大幅値引きで販売し、その後の車検や定期点検に付随する整備で回収することもできます。

オートバックスなどカー用品店も整備業に注力

同様の理由で、オートバックスに代表されるカー用品店大手も整備業に注力しています。オートバックスの中期経営計画(2019)では、今後5年間の注力分野として整備業を挙げています。実際に、整備事業者の買収(M&A)にも積極的です。車の高度化・特定整備といった大きな変化が見込まれる状況下、変化はチャンスと捉えているのでしょう。

整備はプロと一般の間の知識差が大きい分野

また、一般の方にとって、整備は専門性が高く「必要な整備と不要な整備の見分けがつき難い」「その整備の適正な価格がわからない」など、専門家との知識の格差が大きい分野と言えます。ここが、一番のキモかもしれません。

参考リンク集