「自動車整備」と言われて、クリアにイメージが湧く人がどれだけいるでしょうか?地味?斜陽?ニッチ?あまりポジティブなイメージはないかもしれません。

車は、1-2トンもある鉄の塊です。その鉄の塊が、時速60-80kmといった速度で走っているわけですから、整備が必要であることは論を待ちません。そして、日本には、8,000万台もの車が走っており、その車の安全を担保しているのが自動車整備業界です。

自動車整備業界は、9万2千もの工場、54万人もの人たちが働いている大きく重要な産業です。この記事では、自動車整備産業の外観を整理していこうと思います。

なお、自動車整備産業の市場規模や収益に関しては、こちらの記事をご参照ください。
Seibiiマガジン:自動車整備業界の基本 - 工場数と従事者

自動車整備工場の数と内訳

92,000工場、73,000社

これが、日本の整備工場の数です。これがどれだけ多いのか。

  • ラーメン店 : 3万2千軒
  • コンビニ : 5万4千店舗
  • 歯医者 : 6万8千軒
  • 整備工場 : 9万2千工場

これら以上の数があるのが、自動車整備工場なのです。一般の方にとっては驚きの数値と思います。でも、意識して街を歩いてみると、東京都心であっても実は整備工場は近くに複数あることに気づきます。

整備工場の分類・内訳(認定、指定)

まず、自動車の整備工場を正確に定義すると、「分解整備」を行うことができる工場、と呼べます。そして、自動車の「分解整備」を行おうとする場合は、地方運輸局長の「認証」を受けなければなりません(道路運送車両法第78条第1項)。

この「認証を受けた工場」を「認証工場」と言います

つまり、整備工場の数:9万2千工場、とは、認証を受けている整備工場の数になります。

分解整備:原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、連結装置を取り外して行う自動車の整備又は改造のこと(道路運送車両法第49条第2項、同施行規則第3条)。

自動車整備工場(認定事業場数):9万2千事業場のうち、車検を通すことを許可された整備工場(認定事業場)を、指定工場と呼びます。指定工場は、民間車検場とも呼ばれます。この民間車検場は、3万工場あります。

各々、行政からの許可・認定を受ける必要があり、工場に看板を掲げなければいけません。黄色の左側が認定工場、青色の右側が指定工場です。

認定事業場(認定工場)と指定事業場(指定工場)の看板

まとめると、こうなります。

  • 認定工場 : 9万2千工場(「分解整備」を行うことができる整備工場)
  • 内)指定工場 : 民間車検場:3万事業場
  • 内)板金塗装工場数 : 不明
    *鈑金塗装工場は、特段必要となる許可がありません。また、分解整備を行わない工場も同様に、工場の認可を受ける必要がないことから、これらの数に関する公式な統計情報はありません。

さて、認定工場の中に、指定工場が含まれることは説明した通りですが、それは技術的な優劣とは関係ありません。設備の問題で「車検を通すことができる工場」か「車検を通すことができない工場」か、という違いになります。

【認定工場】
腕は確かで費用も安い。車検はできない。車検場で不合格箇所があると一旦車両を持ち帰って再度車検場に行って検査を受けなければならない。

【指定工場】
認証工場のうち、設備、技術、組織等が一定の基準に適合している工場に対して、申請により、地方運輸局長が指定する。一般には「民間車検場」と呼ばれる。

整備工場の分類・内訳(専業、兼業、ディーラー、自家)

自動車整備工場は「専業」「兼業」「ディーラー」「自家」に分けることができます。

  1. 専 業 : 自動車整備業の売上高が総売上高の50%をこえる事業場。モータスとも呼ばれます。
  2. 兼 業 : 「自動車・部品用品・保険・石油販売等」の売上高が 50%以上を占める事業場(ディーラー除く)。ガソリンスタンドなど。
  3. ディーラー : 自動車製造会社又は国内一手卸売販売会社と特約販売店契約を結んでいる企業の事業場。
  4. 自 家 : 主として自企業が保有する車両の整備を行っている事業場。タクシー会社が保有している整備工場など。

9万2千もの工場の内訳を見てみると、以下の通り、専業の整備工場が60%を占めていることが分かります。

  1. 専業 : 5万6千工場(60%)
  2. 兼業 : 1万5千工場(16%)
  3. ディーラー : 1万6千工場(16%)

整備工場の経営の経営

それら整備工場は、どの様な形式で経営がなされているのでしょうか。これも確りとデータが公表されています。

  1. 専業 : 個人:33%、有限:31.5%、株式:30%
  2. ディーラー : 株式:98.7%

専業工場は株式会社としての形を取らずに、個人経営の形を取っている工場が多い事に気づきます。
ディーラーは、ほとんどが株式会社であることは、イメージ通りではないでしょうか。

従業員が10人以下の所謂「家族企業」が整備工場(認定工場)の約8割りを占める、といったデータもあります。(ソース

整備工場数の推移

整備工場の推移を見てみましょう。

2012年から2017年の6年間の推移を見ると、以下の通りとなります。

全体 : ▲0.66% 年率平均
内)専業整備工場 : ▲0.11% 年率平均
内)ディーラー : +0.27% 年率平均

つまり、整備工場全体としては数を減らしつつも、車の販売が主軸のディーラーが整備事業へ進出をしており、専業の家族経営整備工場は減少していると言えます。

実際に、ディーラーに付随する整備工場の数は、以下の通り増加しています。

2013年 : 16,033工場
2018年 : 16,252工場

自動車整備工場・業界で働く人と年齢

整備工場で働く人の数を見てみましょう。

整備工場(行政から認定を受けた認定工場)で働く、総従業員数は54万人です。

  • 総従業員数 : 54万人
  • 内)整備士資格保有者数 : 34.3万人
    2018年

整備資格保有者は、整備工場に勤務する整備士の数ですので、資格を有しながらも別の業界で働いている人の数は含まれていません。

整備士は減っている?

整備産業界では、整備士の数が足りない、といった課題があります。実際に減っているのでしょうか?はい、減っています。以下の通り、統計データが出ています。

  • 2013年 : 34.3万人
  • 2018年 : 33.8万人

整備士の平均年齢

整備士の平均年齢についても、面白いデータがあります。

  • 整備士平均年齢 : 45.3才
  • ディーラー勤務整備士 : 35才
  • 専業整備工場勤務整備士 : 50.3才

ディーラーは若い人が多く、街の整備工場は比較的年齢が上になる、というデータです。これは、肌感覚と会うのではないでしょうか。

ちなみに、日本人の平均年齢は46才です(東京都に絞ると44.27才)。ですので、世の中一般的に、整備士の平均年齢が上とは言えないでしょう。ただし、街の整備工場(独立系専業)に限って言えば、高齢化が進んでいる業界と言えます。

【出所データ一覧】


こちらの記事も是非、ご覧ください! Seibiiマガジン:自動車整備業界の基本 - 工場数と従事者